ルチア―願いを叶える者


「ごめんなさい…」


ダンさんに頭を下げる。

こんな事になったのは、ルリのせいだ。


どんな傷を負ったとしても、誰かを傷つけていい理由にはならない。



「何故あなたが謝るんです?」

「…謝り…たいからです。止められなくてごめんなさい…」


憎しみにかられたルリを…
息子に向けた刃を…



「そんな、俺を救ったのはあなたです。頭を上げて下さい!!」

「でもっ…」

「花音」


アルに名前を呼ばれて顔を上げる。


「やめなさい、ダンさんが困っているでしょう?」


「でも…私……」

「謝って何か変わるのですか?一度負った傷は簡単には癒えないんです、特に心の傷は…」


そんなの……


「…ってるよ……」


自分でも驚くくらい低い声が出た。


「なんです?」

「わかってるって言ったの!!」


イライラする。
謝罪なんかで何も癒えない事はわかってる。


それでも……
自分が苦しい。


そうしなきゃ…
気がすまなかった。


ルカが私に託したものは大きすぎて、今の私には苦しかった。


前を向いて頑張ろうって、何度も言い聞かせた。


それでも…
私だって心がある。










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