ルチア―願いを叶える者
「…私は…もう少しここにいる…」
もう少し、外の風にあたっていたかった。
「…わかりました。では、おやすみなさい…」
「おやすみ…」
いつもなら「俺の言った言葉を理解していないようですね」とか、私を叱るのに…
「アル…私本当はね…」
遠ざかる背中に声をかける。絶対あなたには聞こえない…
だからこの距離から…
「本当は…大好きだったよっ…」
嗚咽で最後は消え入るように空気に溶けた。
私のこの想いは…
私だけのもの……
「…アル…ありがとう…」
もう少しだけ…
もう少しだけ同じ気持ちであれた事を感じていたい…
もう一度月を見上げる。
私の心とは裏腹に、月は陰る事なく私を照らしていた。