ルチア―願いを叶える者
『我は自分に子がいる事を知らなかった。花鳴はそれを隠して消えてしまったからな…』
「じゃあどうして…」
『闇のルチアのおかげだ』
闇のルチア……
ルリの事…?
『我は花鳴を失い、この世界、そして神を、自分自身さえも憎んだ。そして我は己の闇にのまれ、悪魔を引き寄せてしまった…』
「悪魔…まさか……」
自らを神の試練と言ったあの…?
『悪魔は時を超えた先の未来に我の子がいると言ったのだ』
「それが私…」
私だって何百年という過去にお父さんがいるとは思わなかった。
『お前だ、花音。全てが色あせて見えた我は、それを知って初めて世界が鮮やかに見えたのだ…』
「お父さん……」
『花鳴という存在は、最初からこの世界に存在しなかったのではないかと錯覚する程に時が流れ、ただ悲しみだけが残った我には、お前が希望の光だった』
…長い間。
この人はずっと一人ぼっちだったんだ。
愛した人に置いていかれ、その想いを残したままずっと…
「お父さんの時は、あの日からずっと止まってしまったんだね…」
お母さんが死んだ、あの日から…
『そうだ。悪魔は我がお前に逢いたいという願いを叶えるのと引き換えに、世界を滅ぼせと言った』
「…それで…お父さんは…」
『我はお前に逢う為に世界を滅ぼす存在となった。お前も見ただろう?あの死神を…』
死神!!!
リグナに住む死神の姿を思い出す。
人を魔物に落とす死神…
世界を滅ぼす元凶の一つ。