ルチア―願いを叶える者


「…さよう…ならっ…」


小さく呟く。
もう…届かない。

…届かないんだ…


「…ふっ…く……」


両手で顔を多い泣きじゃくる。


「…良く頑張りましたね…」


そんな私をアルは抱きしめてくれた。


「…私っ…一人じゃなかったんだね。こんなにっ…愛されてたっ…」


ルチアにならなかったら分からなかった。


大切な人にも会えなかった。


「ありがとう…アル…。アルがいてくれて良かったっ…」

「っ…何を今更。俺はずっとあなたの傍にいましたよ。鈍感なあなたは気づいてくれませんでしたが」

「ふふっ…そうだねっ…ううっ…」


笑いたいのに涙が出る。
我ながら忙しい。


「泣くか笑うかどっちかししたらどうです?困った人ですね…」



アルは私の頭を撫でた。


ただ…
この人の傍にいられたらいい。


この人と生きて、死ぬ前に見る世界がこの人の笑顔であったなら…


それだけで幸せだったと思えるから…









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