ルチア―願いを叶える者


「あなたはもう幸せになっていいんだよ。あなたの待つ人はもうあなたの元に帰ってきたんだから…」


あとはあなたが還るだけ。あなたの魂の元へ…


「我ノ…還ル…場所…」

「そうだよ。あなたの還る場所」

「我ハ……」


もう一人じゃないから…
あなたはもう悲しくないよ。



死神の体が私の光に溶けていく…


「…ありがとう、生きていてくれて…」


どんな姿でも、世界を滅ぼす存在であっても…


「私を待っていてくれてありがとう。幸せになって……お父さんっ…」


―ピカアァァッ!!!


「…花…音――……」


死神が消える寸前、私の名を呼んだ。


「さようなら…お父さん…」


還るべき場所を迷わぬように、私があなたの道を照らすから…


ルチアの光よ…
お父さんをどうか導いて…


「大丈夫です。あなたの帰る場所はここにありますよ」


泣きそうになる私をアルは抱きしめる。


「うん…。私、まだ一人じゃないもんね…」


二度目の別れ…
笑って送り出すのがこんなに苦しいなんて…


それでもお父さんが最後に見る世界が、私の笑顔だったらいい…


そう思ったから……










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