ルチア―願いを叶える者


「はぁっ!!!」


―ザシュッ

「グアアアッ!!!!」


アルはツルを叩き斬る。


「レイズ王子!!!」


私は大声でレイズ王子の名前を呼ぶ。



―ニュルニュルッ


「ちょこまかと!!!」


―ザシュッ

「グアアアッ!!!」


―うるさい……
静かに眠らせてくれ…


「それでいいの?それで、あなたは満足!?」


闇の中で眠るだけで、あなたは孤独で無くなるの?


―…お前に何がわかる…。ずっと孤独だった俺の何が…


「あなたの孤独って…?」


―兄は父上に愛されていた…


「あなたは愛されていなかったの?」


―俺は…兄上より勉学も、武芸も優れていた。なのに…


「レイズ王子……」


あのナルシストのようなレイズ王子からは考えられないくらいに弱々しい声だった。



―兄上は誰からも愛されて、俺には…媚びを売る貴族だけだった…



「あなたの本質を、見てくれる人はいなかったんだね…」


―俺はずっと誰かに必要とされたかった。だから勉学も、武芸も…


「誰よりも努力してきたんだね…」


―っ……


私が始めてあなたに会った時、あなたは言った。



『お前も俺を否定するのか』…と…









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