ルチア―願いを叶える者
「あなたを連れて行きたい所があるんです」
「連れて行きたい所?」
「はい。来てくれますか?無理に…とは言いませんが…」
…来てくれますか…なんて…
いつものアルなら強引にでも連れて行くのに…
「ふふっ…」
「何です?」
「何にも!…行こう、アル」
いつもより押しの弱いアルも新鮮でいいかな…なんて。
口が裂けても言えないけど…
「変な人ですね。では行きますよ」
アルは私に上着を着せ、抱き上げた。
「わわっ!!?」
「煩いですよ。文句は聞きません」
そのままアルは歩き出す。
アル、私が立てないの気づいて…
その優しさに胸が温かくなる。
「文句なんてない…。あったかくて…安心する…」
私を包み込むような温もりにまた眠くなる。
「っ…なら良いのです…が…花音?」
あぁ…眠い……
このまま寝れたら幸せだなぁ…
あ、でも……
寝ちゃ駄目だよね、運んでもらって…るの……に…
意識が一気に遠ざかる。
「…花音…。いなくならないで下さい…」
意識が途絶える瞬間、アルの悲しげな声が聞こえた。