ルチア―願いを叶える者
「っ…褒め殺し…ですね」
アルは口元を抑えて私から視線を反らした。
アルの頬が少し赤く見える。
「アル?」
もしかして照れてる!?
あのアルが!?
いつも余裕な顔してるのに!!
「…見上げないで下さい。俺を挑発してるんですか?」
「へ?挑発!?」
「無自覚ですか…」
アルは「はぁっ」と本日何回目かのため息をつく。
「もういいです。あなたはこういう人でしたね」
な、なんか諦められてる!?
「なら改めて。花音、口づけてもよろしいですか?」
アルはうやうやしく頭を下げる。
それから、片手で私の顎のラインを撫で、そのまま顎を捕らえる。
「アル…」
「返事は?」
「はい…」
アルの瞳が妖艶なものへと変わる。
「不合格…ですね」
「えっ…?」
アルは悪戯な笑みを浮かべる。
うわ!!
絶対何か企んでる!!
「それでは口づけてあげませんよ。もっと俺を欲して…ほら…」
クイッと私の顎を持ち上げ、私の目をじっと見つめる。
「なっ…」
もっと欲して…なんて…
私…から……?
私はアルに触れたい。
でも自分から…なんて…
「言いなさい、花音」
「っ…口づけ…して…」
「合格です」
アルが私に口づける。
深く、私の吐息まで貪るように…
「ふっ……んっ…」
やだ…私だけ声が出る。
アルは私の反応を楽しむように何度も唇を重ねた。
「愛しています…花音っ…」
「んんっ…私も…愛してるっ…」
そう言ってまた泣く私の涙を、アルは何度も優しく拭ってくれた。
唇を重ねながら、アルの肩越しに見える星空を見上げる。
神様……
今この時だけは……
私とアルの時間を止めて…
この人に触れられる幸せに、溺れていたい。
ずっと…
ずっとこのままでいられたら…
そう願わずにはいられなかった。