ルチア―願いを叶える者
「…何も見つからなかった。レイズも調べてるみたいだがな、何も解決しない…」
シェスは困ったように笑う。
「俺達王家の人間が何とかしなきゃいけないってのにな…。ルアーネを救いたいってのに俺は何も出来ない…」
シェス……
まるで私なんか視界に入ってないみたい。
思い詰めて、シェスの意識はきっと常に民達に向けられているんだろう…
「俺はつくづく無力だと思いしらされるよ。民に見放されて当然だ」
「そんなっ……」
「花音、お前レイズに気に入られたみたいだな」
気に入られたって…
「この髪色が珍しいだけだよ」
「いや、レイズは女を見下してるからな。髪色くらいで気に入りはしないさ。だが、お前をレイズにやるわけにはいかない」
「え………?」
「レイズはお前を手に入れて、めちゃくちゃにする。俺は…花音を壊したくない」
シェス………
「俺には時間がない。俺よりレイズが王に相応しいとなれば、お前はレイズのものになるかもしれない」
「そんなっ…私、シェスとアルの傍にいたいのに…」
「だから、お前を俺の友人に預けようと思う」
…………え……?
今…なんて………?
うまく聞こえなかった。
ううん、理解が出来なかった。
「そこで暮らせば、良くしてくれるだろう。勿論、花音の大切な人も探す。だから…」
「嫌だよ!!」
「花音……」
嫌………
二人の傍を離れるなんて…
「出会ったばかりだけど、私にとって二人はこの世界で大切な人なの!!二人の傍にいたいから…離れるなんて言わないで…」
お願い……
傍にいさせて…
今二人の傍を離れたくない…
「私は…どんな事になっても、二人の傍に…」
「馬鹿だな、花音…」
シェスは泣きそうな顔をする。
「俺もお前に情が沸いてるんだ。そんな事言われたら…離せなくなる…」
「シェス…なら傍にいさせて?シェスとアルの傍に…」
「花音…すまない、考えさせてくれ。花音、お前も良く考えろ」
優しく諭すように言い、シェスは部屋を出て行った。
シェス………
私はあなたと、アルの傍にいたいんだ…
でも……
傍にいても何もできない私は、傍にいる資格があるの…?