ルチア―願いを叶える者
「花の為に泣いたの?」
それから私の頭を撫でた。
「美しい姫は、心まで美しいんだね…」
ナルの顔が近づいてくる。ついギュッとつぶった瞼の上に、柔らかい感触…
「優しい姫、どうか泣かないで…」
ナルのキスだ。
私をあやすように触れたナルの唇に、また涙が溢れた。
「ナル…ナルにはちゃんと帰りたい場所、ある?」
「え………?」
「ナルの居場所、ちゃんとある…?」
その問いにナルは黙り込む。動揺しているように見えた。
「私は…この城が帰る場所…だよ…」
まるで言い聞かせるように言うナルに、私は首を横に振る。
「帰りたい場所を聞いたんだよ」
「帰りたい…場所…?」
「うん。さっき、お城を見てて思ったんだけど、このお城、静か…だったから…」
お手伝いさんが数人、護衛が一人…
たまに兵士さんと擦れ違うくらいだ。