武勇伝 〜拳と拳のぶつかり合い〜
8月上旬の金曜日。

今日はデートだ。
僕は早々と仕事を片付け、待ち合わせ場所である駅前の広場にやってきた。

待ち合わせ時間は18時。
現在の時刻は17時半。

だいぶ早く着いちゃったな…。なにせ仁美は時間に厳しく、以前に5分遅刻しただけでも雷が落ちたほどだった。それ以来、待ち合わせ時間の10分前には到着するようにしているのだが、今日はかなり早く着いてしまったのである。

30分も暇だな…。
ベンチに座り、煙草を吸いながら町行く人々を眺めている。

今日はどこに行こうか…。
付き合いだした当初は小太郎がリードしていたのだが、徐々に主導権を握られていったのだ。

最初はあんなにおしとやかだったのに…年月が経つと本性を出すんだなあ。

最近はデートの場所も仁美まかせだったので、今日は小太郎がセッティングしようと意気込んでいた。

まずは口コミで仕入れた穴場のフレンチレストランで料理を堪能し、次に今話題の恋愛モノの映画を見に行き、最後に小太郎が必死で見つけた夜景の綺麗な丘までドライブ…。

これで仁美は見直すに違いない。小太郎はひとりニヤニヤしていた。
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