一族
一章
木の様子が、変わった――
漆黒の頭髪と瞳。
黄色がかった肌の少年は、足早に歩きながら周囲の木々を眺め、ふと思った。
森のなかである。
辺り一帯には充分に葉を繁らせた樹木が、堂々と聳(そび)え立っている。
しかし少年はそれらを見て、何か、存在感のようなものが小さくなっているような気がした。
いや、実際に幹の太さや背の高さが小さくなっているようにも感じる。
「なあ、あんた……」
少年は視線を進行方向前方にある大きな背中に向け、声をかけた。
その背中の持ち主とは、目を疑うような大男である。
少年と言えど並みの大人ほども背丈のある彼より、ゆうに頭四つ分は背が高く、鋼の――と形容したくなるほどの厚い筋肉が、身体を一回りも二回りも大きく見せている。
大男は少年の呼びかけに反応することなく、黙々と歩き続ける。
「教えてくれよ。どうしてこの辺りの木はこんなに元気がないんだ?」
少年は自身が受けた違和感を、もっとも簡単な言葉に置き換えて訊ねた。
しかし、大男はやはり答えようとしない。
無言のまま、変わらず歩き続ける。
ただぴんと張ったその大きな背中で、「無駄なことは聞くな」と言っているようでもある。
少年は呆れたように、投げやりな笑みを浮かべた。
「相変わらず、なんにも答えてくれないんだな」
皮肉っぽく言い、そして考える。
いったいなにが起きているのか。
そして自分はどうなるのか。
それは大男と出会ってからのこの三日間で、幾度となく考えてきたことだった――。
漆黒の頭髪と瞳。
黄色がかった肌の少年は、足早に歩きながら周囲の木々を眺め、ふと思った。
森のなかである。
辺り一帯には充分に葉を繁らせた樹木が、堂々と聳(そび)え立っている。
しかし少年はそれらを見て、何か、存在感のようなものが小さくなっているような気がした。
いや、実際に幹の太さや背の高さが小さくなっているようにも感じる。
「なあ、あんた……」
少年は視線を進行方向前方にある大きな背中に向け、声をかけた。
その背中の持ち主とは、目を疑うような大男である。
少年と言えど並みの大人ほども背丈のある彼より、ゆうに頭四つ分は背が高く、鋼の――と形容したくなるほどの厚い筋肉が、身体を一回りも二回りも大きく見せている。
大男は少年の呼びかけに反応することなく、黙々と歩き続ける。
「教えてくれよ。どうしてこの辺りの木はこんなに元気がないんだ?」
少年は自身が受けた違和感を、もっとも簡単な言葉に置き換えて訊ねた。
しかし、大男はやはり答えようとしない。
無言のまま、変わらず歩き続ける。
ただぴんと張ったその大きな背中で、「無駄なことは聞くな」と言っているようでもある。
少年は呆れたように、投げやりな笑みを浮かべた。
「相変わらず、なんにも答えてくれないんだな」
皮肉っぽく言い、そして考える。
いったいなにが起きているのか。
そして自分はどうなるのか。
それは大男と出会ってからのこの三日間で、幾度となく考えてきたことだった――。