恋人のルール(ベリーズカフェバージョン)
こんな人だったなんて……。


彩乃は陽斗に失望した。
 

膝の上に置いた両手をぎゅっと握りしめる。


「……いいよ。陽斗の好きにして……」
 

そう強がって言うのが精一杯だった。
 

情けなくなって、涙が出てきそうで、言った後、下唇を噛みしめる。


「彩乃ならそう言ってくれると思ったよ。ありがとう」
 

陽斗はホッとした笑みを浮かべて立ち上がった。
 

反対に、彩乃は陽斗の顔を見ていられなくてヴァイオレット・フィズのグラスに手を伸ばした。


「じゃあ」
 

恋人同士の最後の別れではないように、気軽に片手を上げて陽斗は去って行った。


< 13 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop