【短】匂いの記憶
匂いの記憶
「この本、懐かしいなぁ」
引越しを来週に控え、大量にある本を整理していると。
あたしが大好きだった匂いがほのかに残る本が出てきた。
大好きだった彼の香水の匂い。
大学のサークルが一緒だった彼。
彼はいつも同じ香水を使っていた。
香水だけじゃない、部屋の中も同じ匂いのするお香が焚かれて。
サークルのみんなで遊びに行った彼の部屋からの帰り。
自分の服に移ったその匂いに、またドキドキしていた。