【短】匂いの記憶


彼に貸したこの本。



返ってきたときには、しっかり彼の匂いが移っていて。



本を開くたびに、ふわっと広がった。



それが嬉しくて、何度もページをパラパラとめくる。






彼が、そばにいてくれる気がしたんだ。











彼のその匂いはもちろん、彼自身のことがすごくすごく大好きだったけど。




彼の隣で笑う小さくてかわいい女の子から、彼と同じ匂いがしたとき。








あたしの恋は、終わったんだと感じた。


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