熱を這わせて
「シャワー浴びてから出るか?それともすぐ出る?」
ホテルの通路を歩きながら、先輩がふと振り返る。
そして、いつものように。
「貸せよ、開けてやるから」
にやりと笑って手を差し出した。男性にしては細い指。
けれどその手の平からは熱が感じられて、横目で見つめる。
微かに揺れる手の平に見入りながら。
「大丈夫。ちゃんと自分で開けられます」
拗ねたように視線を返すと、ふっと眉を寄せる危うい表情。
「そ。じゃ、やってみな」
私が泊まる部屋の前。手にしていたカードキーをすっと通す。