熱を這わせて
「こうするんだよ」
切羽詰まった声と共に、私の手は先輩に包まれていた。
カードキーを握る私の手ごとカードを通す。
『ピー』
短い電子音が響く。
その音が何かを弾けさせた。
あからさまな舌打ち。ドアを開けて、背後から私の体を押し込む先輩。
「わざとだろ。いつも、わざとカードキー使えない振りしてただろ」
「どうでしょ。それより、この手の平いつまでここにあるんですか?」
私の手ごと包み込んでいるカードキーを力を緩めて
カーペットに落とした。