珈琲の香り
堂々としてる……か……

今までだって、悩んだり、傷ついたり、落ち込んだり。そんなことあったよ。

でも、それを表に出さなかったのは、みんながそれを求めてたから……

かわいい桜としっかりした樹。

両親も、友達も、桜も……

しっかり者の樹。

桜を守る樹。

それを求めてた。

どんなに辛いことがあっても、『樹は平気よね?』そう言われると、平気でいるしかなかった。


……でもね、私はそんなに強い人間じゃない。

桜のように、守られたいと思うこともある……

いつも堂々となんてしてない……

いつも迷って、悩んで、『これであってるのか?』自問自答しながら進んできた。

それが少し……疲れちゃった……



「……いっちゃんがしっかりしてないと、何か変だよ!しっかり者のいっちゃんはどうしたの?」



きっと、桜には悪気はないと思う。

いつもの私に戻ってほしい。

ただそれだけだったと思う。

……でも、今の私には何よりも突き刺さる言葉……



「―……じゃない……」

「え?」

「―……しっかり者じゃない!私だって悩むし、落ち込むよ!私だって……私だって、女だよっ!誰かに守られたいの!」


気がついたら、大きな声で叫んでた。

今まで、言いたくても言えなかったこと、初めて言った……

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