珈琲の香り
もう泣いてばかりのさっちゃんじゃないんだね……

私よりたくさん恋をして、私より傷ついて、それでもまた恋をして…

私も、強くなれるのかな……

何度傷ついても、また恋をする。

桜のようになれるのかな?



「何か言いなよ!樹は不利になるとすぐ黙っちゃうの!ズルイよ!!」

「だ、黙ってなんてないよ!私だってね、強くなりたいよ!みんなが思ってるような人間になりたい!でもね!無理なの!蒼君を傷つけたことで自分も傷ついたし、涼さんの事、諦めなきゃって思うことが苦しいの!」

「諦めなきゃいいじゃない!過去が何?生きてるんだもん!過去の一つや二つはあるでしょ?そんなこと言ってたら、恋なんて出来ないよ!」


……過去の一つや二つ……
そんな簡単なものじゃない。

もし自分だったら……

愛する人を突然失ったら……

どれだけ時間が経っても、忘れることなんて出来ない。

もう一度、誰かと恋をすることなんて、きっと出来ない。

そう思うから、涼さんを想う気持ちが辛い。


「……樹?泣いてる……の?」



どうも最近、涙腺が緩くなってるみたい。

桜に言われて、初めて自分が泣いてることに気がついた。

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