珈琲の香り
止めなきゃ……

そう思うのに、次から次に溢れる涙を止めることが出来ない。

桜の前で泣いたの、何年ぶりだろう?

こうやって言い争いするのも、涙を流すのも、本当に久しぶり……

私、いつの間にこんなに弱くなってたんだろう?

蒼君に憧れ、涼さんを好きになった。

ただそれだけなのに……

桜の前で泣くほど、私は弱くなっていた。


「……桜……苦しいの……涼さんの事を好きになった……それが苦しい……」

「いっちゃん……」


そっと桜が肩を抱いてくれる。

その温もりが嬉しかった。

あれだけ言い合っていても、そっと寄り添ってくれる。

桜と双子で、本当に良かった……

フワフワの桜と、かっちりした私。

似てる所なんてないけど、それでも私たちは双子なんだ。

お互いの気持ちに寄り添える。

友達より近い存在。

似てる所なんてなくていい。

誰がなんて言おうと、私たちは双子で、お互いに傷つけ合うことがあっても、お互いの苦しさに、一番近く寄り添える。

双子なのに、まだまだ知らない桜がいて、これからもきっと喧嘩するだろうな……

でも、私の弱さに寄り添ってくれるのはいつも桜で、桜の弱さに私も寄り添いたい。

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