珈琲の香り
「フ……フフフ………ッ」

「何?いっちゃん、気持ち悪いよ…」

「桜……ありがと……」

「どういたしまして。……いっちゃん、どうして苦しいのか、話してみたら?新堂くんから大抵の事は聞いたけど、詳しくは知らないし、話したら解決策が見つかるかもしれないよ」


そう言って笑う桜は、誰よりも心強い味方で、誰よりも私を理解してくれている。

正解のない問題を逃げ続けた私とは違う。

正解のない問題を解き続ける桜は、きっと私にない答えを知ってる。

それが正解かどうかは……わからないけど……


「蒼君から……聞いた……?涼さんのこと……」

「んー、詳しくは聞いてない。樹が涼さんを好きになったってことと、涼さんは実のお兄さんじゃないってことぐらいかな?」

「そう……」


話して…いいかな……?

話さないと、何も進まないから……


私はひとつ、深呼吸するとそっと肩を抱いていてくれる桜を見つめた。


「もし……もしね、今環さんが死んでしまったら、桜は環さんを忘れられない?」

「そりゃあそうだよ。環の事、大好きだもん。」

「涼さんにも……そういう人がいたの。今は亡くなってるけど……」

「もしかして……それって新堂くんに関係ある?」

「うん……お姉さん。」

「お姉さん?……じゃあ、涼さんって……?」

「蒼君の……亡くなったお姉さんの旦那さん………。蒼君とは義理の兄弟……」


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