珈琲の香り
私と桜は思わず顔を見合わせた。

意識した訳じゃなくても、時々起こるシンクロ。

こういうときはやっぱり“双子”であることを思い出す。


「……別に、用って言う用はないんだ。ただ、あれから出てこないから……」

「心配だったんですよね?」

桜の声が玄関に響く。

その声に反応するように


「また赤くなってる………」

涼さんの顔が赤くなっていく。

…………?

何で赤くなるの?

別に変なことは言ってないけど………?


「いい年して素直じゃないなー。心配だったんですよね?」

「うっ…………」


心配………だった……?

私を………?


「心配……したん………ですか?」

「そ、そりゃあ、あんな風に泣かれりゃ、心配もすんだろう?……それに、連絡も無しで来ないから!」


何だか可笑しい。

いつも冷静で、何があっても動じない涼さんが、真っ赤な顔しておたおたしてる。

もちろん、涼さんの言ってることは正しい。

あんな風に別れて、連絡もしないで休んでたら、誰だって心配する。

だけど、玄関先でこんな風に赤い顔しておたおたしてる。

心配させたのは私だけど……


「やっぱりおかしい……」

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