珈琲の香り
コーヒーの準備をする手が止まる。


ねぇ……風花さん……

私、涼さんが好きなの。

その涼さんの心の中にはあなたがいて、私が入り込めないの。

あなたを追い出したい……

でも、そう思う自分も嫌なの……

私って、我儘ね……

自分の気持ちを、涼さんに伝えたいの……

でも、あんな顔見せられたら、伝えられない。

風花さん、恋って難しいね。

私は絶対に、あなたに勝てない………



「大丈夫か?」


いつのまにか目の前には涼さんが立っていて、コンロの火は消されていた。


「ボーッとしてんじゃねえよ。火事起こすぞ!」


怒ったような顔をした涼さんが目の前にいる。

無愛想で、無口で、いつも何を考えているのかわからない顔をして、でも、時々悲しい顔をして……

時々見せてくれる笑顔が優しくて……


私、そんな涼さんを好きになったんだ。

風花さんの事を聞かされたとき、すごくショックだった。

でも…それでも………


「好き………です………」

「………………何が?」

「涼さん……が……」


気がついたら言っていた。

< 116 / 174 >

この作品をシェア

pagetop