珈琲の香り
桜の優しさに甘えて、しばらくの間泣き続けた。


「明日は行くんでしょ?」

「‥‥行かなきゃ‥‥だめでしょ?」


『聞かなかったことにする。』そう言われても、『来るな』とは言わなかった。

涼さんがなにを考えて、そう言ったのかはわからない。

だけど、ここで逃げ出すわけにはいかない。


「行く。涼さんがなにを考えてるのか分からないけど。待ってるって言ってくれてるから。明日は行くよ。」

「さすが!いっちゃんはそうでなくちゃ!」


桜は笑うと、私の事をギュッと抱き締めてくれた。

見た目も性格も正反対で、『桜のようになりたい』と思ってきた。

だけど、私は私。

桜のようにはなれない。

だけどね、誰かを好きになる気持ちって、桜も同じなんだ。

同じように悩んで、同じように傷ついて……

恋は方程式のように答えがない。

だけど、答えがないから、何度も傷ついて、何度も悩んで、桜のように強くなれるのかもしれない。

私も、少しは強くなれるのかな?

とにかく、明日は涼風に行こう。

それで、もう一度涼さんに言おう。

『涼さんが好きです』って。

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