珈琲の香り
「…――いらっしゃい……」

カウンターの向こうから、マスターの声がかかったんだけど……


「………あっ!」


そこにいたのは、昨日スーパーでぶつかった大きい人!

白いシャツに黒のベストを着て、昨日とは全然違う雰囲気。

でも、あの涼やかな一重の目は…

そうだ!間違いない!


私の声に驚いたのか、マスターはゆっくり顔をあげると、じっと私を見つめる。



「…昨日のお嬢ちゃんか……?」


覚えてくれてたんだ……

スーパーでぶつかっただけなのに……


「…――いっちゃん。」

「あ、ごめん…」


桜に押されるように奥の席に座ったんだけど、どうしてもマスターから目が離せない。

慣れた手つきでお冷やをいれて運ぶ、その所作が色っぽくて、ドキドキしちゃう。


「…昨日は、大丈夫だったか?」

「大丈夫です!」


昨日も思ったけど、やっぱり大きいなー……

声も渋くて、大人って感じ。

…でも、新堂くんの方がかっこいい!


「……注文は?」


はっ!イケナイ!

不躾にジーッと眺めちゃってたよ。


「私はアメリカン。桜は?」

コーヒー専門店だけあって、メニューもほとんどがコーヒー。

桜、飲めるのあるのかな?


「………ホットミルク、ください」


か……可愛い!

可愛すぎるよー。


ここでホットミルク注文しちゃう桜が可愛い!

しかも似合っちゃうところがもっと可愛い!

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