珈琲の香り
「…………」


む、無言?

普通、注文とったら何か言うでしょ?!

何で無言で帰っていくのよ!


「……――いっちゃん、怖いよ、顔……」

「この顔は元々よ!…って、そうじゃなくて!」

「いいじゃない?無口なマスターって。それと、元々…なんて、パパがかわいそうだよ」


……いいのか?

一応は客商売だよ!

あんなに無口じゃお客さんだって逃げてっちゃうよ!

…まぁ、桜がいいならいいんだけど。


たまにいるんだよね。

無口なマスターって……

その反対にすっごいおしゃべりなマスターもいるんだけど。


どっちがいいって言われれば、無口なマスター……かな?



「そういえば、いっちゃんって何で初めてのお店はアメリカンなの?」

「あれ?言ってなかったっけ?…アメリカンって、本来は浅く煎った豆で、薄く淹れたコーヒーのことなの。でも、ブレンドをお湯で割って出すところが多くて……そういうのが嫌だなーって」

「へー。そうなんだ。……で?ここはどう?」

「…どうかな?」


カウンターに目をやると、ちょうどコーヒーを淹れ始めたところだった。


カウンターに並ぶいくつもの瓶。

すべて豆のまま入ってる。

もしかして……


豆から挽くの?

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