珈琲の香り
思わず桜の顔を見たけど、やっぱり桜も驚いていて…

目が落ちちゃいそうなほど見開いてた。


「何でわかたんですか?」

「…似てるから…かな?」


…似てる…?

私と桜が…?


「ウソー!!似てないですよ!」

「俺から見れば、似てる…」


それだけ言うと、カウンターに戻って行った。



しかし…似てるなんて言われたの、初めてだ。

両親でさえ「双子なのにね~」なんて言ってるくらい、本当に似ていない。

それなのにマスターは似てるって…


「…いっちゃん。初めてだね。似てるって言われたの」

「そうだね。お父さんたちだって似てないって言ってたのに…」

「でも、ちょっと嬉しいな。いっちゃんに似てるって言われて……」

桜は本当に嬉しそうに笑ってる。

…確かに、嬉しい…かも。

一緒に生まれて、同じ遺伝子を持ってるはずなのに全く違う私たち。

外見も、好きなものも、すべてが正反対。

言わなければ双子だってわからない。

双子なのに、双子じゃない。

それが当たり前だと思ってた。



「ねえ、桜…」

「わかるよ~。いっちゃんの言いたいことくらい。だって、双子、でしょ?」


そんな嬉しそうな顔して、本当にわかってるのかな?

“私と似ていて…いいの?”

そう聞こうと思ってたのに…

< 17 / 174 >

この作品をシェア

pagetop