珈琲の香り
でも、本当にうれしそうな桜の顔を見ていたら、やっぱり聞かなくてよかった。


「…私ね、いっちゃんと双子でよかったって思ってるよ…」




ホットミルクに描かれた双子の女の子の顔を見ながら、桜がほほ笑んでくれる。

あー…やっぱり双子だ。

言わなくても言いたいことが伝わってた…




「…――この絵って、マスターが書いたんだよね?」

「そうだと思うよ。よかったね、桜」

「うんっ!でも、あんな顔してるのに、結構器用なんだね」

携帯で写真を撮りながら、桜は愉快そうに微笑む。


確かに「あんな顔」だけど……言いすぎじゃない?




無愛想で、器用そうには見えない武骨な手、大きな体。

まさに「ザ・男」って感じの人なのに、あんなに可愛いラテアートを描く。

こんなに可愛い絵を描いてくれてるってわかってたら、ちゃんと見てたのにー。


「…――こんな顔ですまなかったな」

「「―――!」」


………やっぱり聞こえてた。


って言うかさ!

さっきから気になってるんだけど!

いちいち反応すること!


他にお客さんもいないし、私たちの声が響くのはわかるけど。

でも!いちいち反応されちゃうと話しづらい!

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