珈琲の香り
話しづらいけど……楽しいっ!

無愛想で、時々会話に乱入してくるけど、可愛いラテアートが描けて、美味しいコーヒーを淹れてくれる。

こんな素敵な喫茶店、初めて!



「いっちゃん、気に入ったみたいだねー。今度いっちゃんがいなくなったら、真っ先にここに探しに来ようっと!」

「人を猫みたいに言わないでよっ!」


フフって笑う桜の後ろで、扉が開いた。

お客さん…来たんだ。

何だかちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、安心した。




「…――兄ちゃん、ブレンド……」



……ん?

この声って………

…………新堂…くん……?

じっと見つめる視線に気がついたのか、こっちを振り返って、驚いた顔を見せた。

「あれ?樹と桜ちゃんだー。何してるの?こんなとこで」


…神様。ありがとうっ!

まさかここで新堂くんに会えるとは……

偶然ってすごい!


「……お前ら、知り合いか?」

「ああ。同じ大学の子。奥に座ってる子が、同じ研究室なんだよ」

「ふーん……」


ふーんって何?

そんな興味無さそうな返事はっ!

せっかく新藤くんが……


って………

さっき、『兄ちゃん』って言ったよね?

『兄ちゃん』って………?

まっ、まさかっ?!

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