珈琲の香り
会計を済ませて袋に詰めると、大きいレジ袋3袋。

量はあるけど、重さがないのが救い。


が、しかし……持ちづらい……


3袋って微妙だよね。

片手で持つには多すぎて、両手で持つにはバランスが悪すぎるの。

非常に中途半端。

しかも、これからパン屋に寄らなきゃいけないんだよね……


「……パン、潰さないで持てるかな?」


そこが心配……


……深いため息をつきながらパン屋に向かう途中、フッと手元が軽くなった。

ひ、引ったくり……?

いやいや。こんな買い物袋引ったくったって、入ってるのは野菜だけですよー。

…と顔をあげると、そこには


「新堂…くん?」


相変わらずの爽やかな笑顔を浮かべた新堂くんの顔があった。


「樹、買い出しでしょ?ほんっと兄ちゃんは人使いが荒いなー」


そう笑いながら、私の手からレジ袋をさりげなく持ち替える。

そんな優しいことされちゃうと、誤解しちゃうじゃない……


「新堂くん。何でここに?」

「あー……にいちゃんとこ行こうかな?って思ったら、樹が歩いてたから」

「そっか!偶然だねー」

「……偶然じゃなかったら?」

「え……?」


見上げた新堂くんの顔は、今まで見たことがないほど真剣な顔をしていて、すぐに言葉が出なかった。

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