珈琲の香り
新堂くんが荷物をもってくれたお陰で、パンを潰さないで持つことができたんだけど……


『樹ちゃんの彼?かっこいいじゃない!』


……なんてパン屋のおばさんにからかわれちゃった……


「……彼氏…か………」


隣を歩く新堂くんをそっと盗み見ると、きれいな目がまっすぐ前を向いていて

…ほんっと、きれいだよね………

見惚れてしまう。

こんなに優しくて、かっこいい人が彼氏だったら、きっと幸せなんだろうな………


「…――もう、仕事には馴れた?」

「はひぃ?」


……驚きすぎて、変な声出しちゃったよ!?

み、見惚れてたのバレたかな?


「変な声出さないでよ。バイトは馴れた?にいちゃん、人使い荒いから心配してたんだ」


うっ……優しいなー。

私の事、心配してくれるなんて……


「だいぶ馴れたよ。涼さん無愛想だけど優しいし」

「そっかー。よかったー」


そう言って笑う新堂くんはやっぱり王子様みたいで。

私なんかが横にいていいのかな?なんて思ってしまう。


…いかんいかん!

同級生じゃない!

同じ研究室の友達じゃない!

卑屈になっちゃダメだ!

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