珈琲の香り
バイトして、学校行って、またバイトして、くたくたになって帰ってきたら、彼氏が他の女と話してたからって!

たかがこんなことで浮気を疑って、愚痴って…

とにかくムカつく!


……こっちは片想い中だっつーのに………


「…――いっちゃん、聞いてるー?そんでねー、環がねー」


………こんなに酔った姿、学校の男どもが見たらどう思うんだろう?

スウェット着て、胡座かいて、缶ビールもって……

外で見せる姿とは大違い。

可愛らしさの欠片も……

欠片くらいはあるか。

何着てても、どんな座り方してても、可愛いもんは可愛いか。


「桜、もう寝たら?寝て、明日の朝、玉城さんに連絡してごらんよ?」

「うーん…」

「なんだったら、直接聞いてみれば?浮気してる?って」

「…他人事だと思って……」

「他人事だからね。いくら双子でも、こればっかは当事者になれない」


そこまで言うと、ジロッと睨みながら、フラフラと部屋へ戻っていった。


「ふー……やっと解放される」


ため息と共に立ち上がると、桜の飲み散らかした缶を片付けるためにキッチンへ向かった……んだけど………


「いっちゃん!やっぱり浮気ー……」

「早く寝ろっ!」


まだ話したりない桜に向かって、台布巾を投げてやった。

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