珈琲の香り
「幻聴………?」

「残念ながら……」

「じゃあ……どこに?今からだと、授業が間に合わないけど……」

「はー……もう一度言うね。僕は、樹が好きなんだ。だから、付き合ってください」


はー?蒼くん、今すごいこと言ったよ?!

私の事、好きだって言ったよね?!

夢じゃないんだよね?!

現実なんだよね?!


いきなりの事で頭、真っ白なんですけど!

こういうときって、どうしたらいいの?

普通に“はい”って言えばいいの?

それとも、“私も好きです”って言う?

人生2度目の告白は、王子様からだよー…

前の時って、何て答えたんだろう……?


………ヤバイ。思い出せない。


「…そんなに焦らなくていいから」


蒼くんの柔らかな声が降りてきて、ゆっくりと顔をあげると、私から視線を逸らして、心なしか赤い顔をした蒼くんがいた。


……蒼くんでも、緊張するんだ。


そう思ったら、肩の力が抜けて、なんだか嬉しかった。

王子様だって、イケメンコンテスト2年連続1位だって、有名企業の御曹司だって、おんなじ人間なんだ。

おんなじ人間で、告白するときは緊張するし、顔が赤くなるんだ。


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