珈琲の香り
蒼くんに“好きだ”と言われて10日……

校内に私たちが付き合い始めたと言う噂はあっという間に広がり、私は好奇の視線にさらされている。


もちろん蒼くんは『気にしない』って言ってくれるけど……

釣り合いとれてないなーって思うんだよね、周りに言われなくても……





「…――わかってるんです。釣り合いがとれてないことぐらい。蒼くん、イケメンだし……」


涼風の午後は今日も暇で、課題のレポートを書きながら涼さんに愚痴ってみる。

だけど、涼さんは相変わらずの無愛想な顔をあげもせず、のんびりと豆を煎っていて……聞いているんだか、聞いていないんだか、豆に集中してる。


「……蒼くんは気にするなって言ってくれるけど、やっぱり……」

「…蒼は気にするなって言うなら、気にすることはない」


…あ、聞いてた。

豆に集中してて聞いてないと思ってた。


「そうなんだけど……でも、私なんかでいいのかな?とか考えちゃうし……」

「………」

「ずっと蒼くんに片想いしてて、まさかこんな風に告白されると思ってなかったし……」

「…蒼が好きだって言ったんだったら、蒼を信じてやれ」


……信じてやれって……

わかってるのよ!それくらい。

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