珈琲の香り
わかってるんだけど、たった10日、あの好奇の視線にさらされたら、少しだけ萎えちゃったのよ……

幸せーって気持ち……

我ながら弱いなって思う。

告白されて嬉しかったのに。

それなのに、たった10日でこんな風に不安になってるなんて……

片想いしてたときは、『蒼くんとお付き合いできたらいいな』って思ってたのに…

どんなに妬まれても、きっと幸せなんだろうなって思ってたのに……

たった10日で萎えちゃった私って……


「はぁ~…」

「…ため息つくと、幸せが逃げるぞ」


涼さんの声にパッと顔をあげると、優しい視線とぶつかった。


やだ……ドキドキしてる……

蒼くんに感じるドキドキとは少し違う、なんだか泣きたくなるようなドキドキ…

目をそらすこともできなくて、お互いにじっと見つめ合ってしまう。


涼さんの顔って、蒼くんとは違う大人の魅力があるんだ…


「…――にいちゃん、何僕の彼女口説こうとしてるの?」


突然の声に驚いて入口を見ると、ちょっと怒ったような顔をした蒼くんが立っていた。


「…別に口説いてなんかいない」

「ウソ!風香さん口説いてた時みたいだったよ」

「…風香はこんなにガキじゃねぇ」


…ガキって……何気に失礼なこと言ってるんですけど!

でも…

何?ちょっと涼さんの雰囲気が変わったような…?

怒ってるような、悲しんでるような、なんだか複雑な顔してる。


「…風香さん…って…?」

「お前には関係ない。今日はもう帰れ」


そう言うと、涼さんは店の奥へ入って行った。


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