珈琲の香り
そっと見上げると、そこには甘い瞳をした蒼くんの顔がある。

夏休み直前の暑い日差しの中、汗ひとつかいていない涼しげな顔。

そんな涼しげな顔が少しずつ近づいてきて……


「僕のことだけ、見ていてよ……」

「……」


一瞬、何が起こったのか、わからなかった。

柔らかな唇がそっと触れて、それがキスだって気づくまで、少し時間がかかった。


「…樹。僕だけを見ていて。他の誰でもない。僕だけを見ていて……」


緩い下り坂の途中。

午後の日差しがジリジリと肌を焼く。

今、私の目の前にある蒼くんの瞳は甘い色を灯して、私だけを映している。


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