珈琲の香り
私って…こんなにヘタレだったかな?

席に案内してもらって、とりあえずのビールを注文した後。

目の前に座る蒼くんとの沈黙が怖くなって、一生懸命話題を探したら…


「…――蒼くんって、お酒強いの?」


なんていう質問になってしまった。



「うーん、どうだろう?まあ、人並みには飲めるよ。そういう樹は?」

「私も人並みに…」


なんて嘘…。人並み以上に飲みます…

母の家系は大酒のみが多く、特に女性はお酒に強い。

私も例外ではなく、お酒は強い。

飲ませて酔わせてどうこうしよう、なんて不埒なまねができない程度に強い。

もちろん顔色も変わらなくて…

“酔っちゃった…”なんて可愛らしく寄りかかる、なんてことはできない。

反対に桜は父の家系に似たのか、あまりお酒は得意ではなくて…

飲むと頬がピンクに染まり、名前の通り“桜”になる。

その辺も、桜がモテる理由なんだろうな…


…って、桜がモテる理由なんてどうでもよくて…

きっと、いつものペースで飲んでたら、蒼くんに呆れられちゃうよね…

今日はセーブしないと…

……蒼くんの言う「人並み」って、どれくらいだろう?

っていうか、女の子の「人並み」って、どれくらい?

飲むのは生ビールでいいの?それともカクテル系がいい?

あー!!普通の女の子の感覚がわからない~。


「お待たせしました!!」


「普通」の女の子についての脳内会議中に届いた生ビールは程よく冷えてて、“暑い中歩いてきてご苦労だったね”と言っているようで…

あ~…早く飲みたい…

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