珈琲の香り


…――その後、何度かため息を飲み込み、無理矢理笑顔を作って頑張ること2時間。


「…ごちそうさん」

「ありがとうございました」


モーニング最後のお客さんを送り出して


「はぁ~……」


テーブルを片付けながら、盛大なため息をつく。

……私らしくない。

こんなにため息つくなんて……

わりと楽天的で、白黒つかない問題は避けてきたのに。

…避けてきたっていうのは、ちょっと違うか……

白黒つかない、答えのない問題には手を出さない。が正解かな……

そんな私がため息ついてる……


「……らしくない」

「…何がだ?」

「こっちの話です」


最近独り言まで増えちゃった。

あー、ホント。らしくない。


ガチャガチャと食器をカウンターに置くと、目の前に置かれたのはアイスコーヒーのグラス。


「……?」

「…逃げた幸せ、少し取り戻せ」

「下心……あり?」

「バーカ」


涼さんって、やっぱり優しいんだ。

いつも無愛想で何考えてるかわからないけど、ちゃんと見ててくれてるんだ。


「…今日は暑いからな。頭もヘンになる」


………ヘンって!

確かに暑いけど……

でも、私の様子がおかしいって、見抜いててくれたことが………



………嬉しかったりする。

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