珈琲の香り
ズルいとか、ズルくないとか。

蒼くんと付き合ってるのは正解なのか、不正解なのか。

涼さんと一緒にいると楽に感じるのは正解なのか、不正解なのか。

私には全くわからない。


「……数学みたいに、答えがあるといいのに」

「………」

「蒼くんと付き合ってること、正解なのかな?」

「………」

「恋に、○とか×とかあるといいのに……」

「…そんなもん、必要ねぇだろ」


必要ない……か。

“何か違う”ってフラれた経験があるから。

やっぱり必要だよ……

もう“何か違う”ってフラれるのは嫌だから。


「ありのままの自分を、見せるのが怖い。」

「…見せなきゃ、疲れちまうぞ」

「それは……わかってるけど……」


お客さんのいなくなった涼風には、私と涼さんの二人きり。

即席の恋愛相談室になってしまったけど、涼さんには本音を言える。

気取った言葉も、気取った態度も必要ない。

ありのままの自分。

疲れることなんてない。

本当に“楽な”関係。

……雇用主と雇われ人だけどね。


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