珈琲の香り
ハーフパンツにTシャツで、いつもより幼く見える。

研究室で見せてくれる顔も優しいけど、今目の前にいる蒼くんは、もっと優しくて………


ガムシロップたっぷりのアイスコーヒーみたいに甘い……

もちろんミルク入り……



「…――?」

「な、何でもない……。それより、早かった……ですね?」

「ですねって……。」



蒼くんに苦笑いされちゃった……

――何でこうなっちゃうんだろう……。

普通にしたいって思っても、涼さんのように話せればって思っても、どうしてもてできなくて。

普通に話すことも、笑うことも、私には難しい。

それに


「…――私にはガムシロたっぷりのアイスコーヒーは甘すぎて無理……」



ガタンッ



…――涼さん、コケてる。


「ぶ………ははははっ!涼さんがコケてるー!」

「…うるせぇよ!お前が変なこと言うからだろっ!!」

「あらっ?私は言ってませんよー!それより、カップ割らないでくださいね!高いんだから!!」

「…お前に言われたかねぇよ!」



このとき、私と涼さんのやり取りを、少し寂しそうに蒼くんが見つめていたなんて、知らなかった……


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