珈琲の香り
涼さんは『本音を言わないと疲れる』って言ってたけど、言ったらきっと引かれちゃう……


「…――どこでもいいよ!樹の行きたいところなら、どこでも。」

「………ホント?」

「ホント!」

「…引かない?」

「大丈夫!どこでもいいよ?どこ行きたい?」


………言ってみる?

言ってみようか……?


……

………

…………

……………よしっ!


「…――バイク屋に…行きたい……」

「よしっ!バイク屋ね!いこう!!」

「嫌じゃ……ない?」

「何で?樹は行きたいんでしょ?」

「うん…」

「じゃあ、行こうよ!」


…ホッとした……

引かれるって思ってたから、蒼くんの反応が怖かった。

でも、言えてよかった……

蒼くんとの距離、少しだけ縮まったかな?

やっぱり本音って、大切なんだ。


涼さんに、感謝しないと。

少しだけ、素直になれましたって。



…―――2度目のデートはバイク屋巡りで、誰よりも喜んだのは、蒼くんだった。


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