珈琲の香り
…――翌日


今日もまた、いつものように涼風でバイト。

ただ、昨日と違うのは、今日は蒼くんが来ないっていうこと。

昨日の別れ際、

『明日は用事があるから、にいちゃんの所にはいかないね』

と言っていた。



「涼さん、今日は閉店までいてもいい?」

「…客としてか?」

「どっちでも。今日は蒼くんは来ないし、家に帰っても桜はいないし。寂しいんだもん……」

「…寂しいって。見た目だけじゃなく、中身も子供みたいだな」

「おじさんに子供扱いされるなんて……」

「…誰がおじさんだ」


開店準備をしながらの言い争いが店内に響く。


…――やっぱり楽だな。

涼さんとこうやって話してるの。

気を使わなくていいし、気を使われなくていい。

そう思ってるのは、私だけかもしれない。

でも、涼さんとなら、普通に話せる。

何も考えないで、思うままに話せる。


……年上だから?

それとも、涼さんだから?

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