珈琲の香り
今日もモーニングは大盛況。

次々にお客さんが来ては帰っていく。

まるで戦場みたい。


そんな忙しさのなかでも、涼さんは顔色ひとつ変えないで注文をこなしていく。

それも、間違えることなく。

慣れもあるだろうけど、機械みたい。


「…――涼さんって、本当はロボットなんじゃない?蒼くんが開発した?」

「…バカなこと言ってんなよ。さっさと洗え!洗ったら休憩中の看板な。」

「ん?何で休憩中?」

「…泣き顔、見られたくないだろ?」

「は?」



…泣くまで特訓するつもりなの?

想像するだけで……怖い。

っていうか、コーヒー淹れるのに、そこまでする必要、あるの?

恐ろしい……恐ろしすぎる………



涼さんの不適な笑みを見ながら、食器を洗っていく。

1個、また1個とグラスやカップが減っていく。

それを横目で見ている涼さんの顔は、どんどん笑顔になっていく。

その笑顔、私には鬼にしか見えない。

それとも悪魔?


「……魔王降臨」

「…あ゙?」

「何でもないです……」


もう……逃げ道はないみたい。

諦めよう………



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