珈琲の香り
「さ~く~ら~!」

「新堂君と話して決めたんだよ。いつかはバレるし、バレたらいっちゃんが悪者になっちゃうからって……」

「え……いつ……?いつ蒼君と話したの……?」

「いっちゃんが“別れた”って話してくれたあと。心配してたよ。いっちゃんが悪者にならないかって……」


……そんな心配……しなくていいのに……

私が悪いのに……

蒼君はなにも悪くないのに……

どこまでいい人なのよ……

それに、桜も。

たとえ双子であっても、私の味方なんて、しなくていいのに。




……ダメ。

泣きそう……



こんな私の味方になってくれた蒼君や桜の気持ちが痛くて、重い。

コーヒーを飲もうと伸ばした手が震えてる。


「……いっちゃん。新堂君はきっと、守りたかったんだよ。最後まで。……今度は友達として、いっちゃんを守ってくれるよ。」


友達として……

友達の資格、私には……


「……いっちゃん。恋や友情に、資格なんて要らないんだよ。自分が守りたいから守る。それに、涼さんが好きで、別れるって答えを出したの、いっちゃんでしょ?」

「そうだけど……」

「じゃあ、堂々としてなよ!」


それだけ言うと、桜は寝室へ入っていった。

その後ろ姿は、いつも見てる、誰かに支えてもらわなければ倒れてしまいそうな、弱い桜ではなくて、今の私よりしっかりとした背中だった。

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