桜が求めた愛の行方
勇斗はイライラしていた。

かれこれもう2時間近くこうして
暇をみつけては、さくらに電話しているが
応答するのは電源を切っているか、
電波が届かない所にいるというアナウンスの
繰り返しだった。

田所は大きくため息をついた。

部下たちがいつも堂々としている上司の
イライラした様子に困惑している。

わざわざホテルの一室を借りて会議をしているのは、改装中のベイサイドホテルが
ここの造りと同じにしている為。

机上のイメージより実際見た方が良いと
勇斗の提案で今朝からここにきているの
だが、これでは本社の会議室の方がましだ。

より良い意見や案が欲しくて、
参加店舗との打合せまでをここにしたのに
意味がなくなってしまう。

見かねた田所は、ついに立ち上がって
勇斗の元へ歩み寄った。

『どうされました?』

『あ?あぁ、うん……
 今日のさくらの予定聞いてるか?』

『いえ』

なるほど。
田所は内心で呆れて苦笑いした。

目の前の端正な顔立ちの男は婚約者が
いるにも関わらず、この5年女性達と
それなりの付き合いをして、
さくら様のさの字も口にしたことが
なかったというのに。

さくら様がパリから戻ってからの変わり様
と言ったら。

まあ、同じ男としてわからない訳ではない。

さくら様は男が守ってやらなければと
思わせるタイプの女性なのに、
本人は自分一人で生きていけると
必要以上に他人を寄せ付けない。

そこがまた庇護欲を掻き立てられるのだが。

『真斗様とご一緒なのでは?』

『あいつは確か試験中だろ?』

『ああ、そうでした。何か急用ですか?』

『いや、そう言う訳じゃないが、
 こんなに連絡がつかないのは初めて
 だから、何かあったんじゃないかと…』

勇斗は自分で言った言葉の重要さに気づいて
焦っている。
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