桜が求めた愛の行方

仕事を終えたのは夜の8時を過ぎだった。

『お疲れ様でした』

『ああ、なんとか形になりそうだな』

『はい、こちらに関してはあとは動き出す
 のを待つばかりですね』

『無事に行くだろうか?』

『珍しく弱気ですね、
 早くさくら様に会われた方がいい』

『なっ!』

『まだこちらにいるようですよ』

『早くそれを言え!今日はここでいい』

『はい、お疲れ様でした。
 明日は8時にお迎えに上がります』

『わかった、お疲れ』

勇斗はレストランへ向かった。
この時間にホテルにいるのなら、
誰とであろうが食事中だろう。

友人?結婚式で紹介された顔ぶれは、
思い出そうとしたが、みんなボンヤリと
しか浮かばない。
思い出せるのは、美しいさくらのドレス姿。

ふと、廊下からガラス張りのレストランを
見て、足を止めた。
さくらが楽しげに食事をしているのが
見える。
あの笑顔は本物だ、俺の同伴で行く退屈な
食事会で見せるのとは違う。

リラックスして安心している。

よほど親しい友人なのだろうと、
手前の人物を見て体が強張った。

『誰だ?』

後ろ姿だが、明らかに男だ。
その男が立ち上がると、親密そうに
さくらの手を取りレストランを出た。

怒りがものすごい勢いで全身を駆け上がった

さくらが俺に言えずに隠している事の
正体はあれか!?

足が無意識にレストランへ歩き出した。

出てきた二人はエレベーターへ
向かっている。

やめろ!そんな筈はない!

男がさくらの肩に手を回した。

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