桜が求めた愛の行方
彼が終えた時には、
嵐の中でただ呆然と立ち尽くしているよう
だった。

いつものような甘い気だるさや、
包み込むような優しい腕はなかった。

ゆるゆると瞳を開けると、
起きあがった彼が処理をし服を整えるのが
見えて、お互い着衣のままの行為だったことに
改めて衝撃を受けた。

『まだしばらくは、とりあえず、を
 続けてもらわなければならない』

『えっ?』

新たなナイフがまたひとつ胸に刺さった。

悲鳴をあげて心が崩れていく。

『軽井沢がなんとか形になるまで、
 お互いに我慢しなければならないな』

容赦ない言葉はさくらから全ての感情を
消し去ってくれた。

お互いに……
そうか、そう言うことだったのね……

答えを求めていないであろう彼の言葉に
あえて頷いた。

『先にシャワーを浴びてくる』

勇斗がバスルームに入って水の音が聞こえて
くると、気力を振り絞って起きあがった。

服を整えて黙って部屋を出た。
痛む身体を無視して駆け出し
駐車場に着いて、車に乗り込んでから
ようやく自分に泣くことを赦した。

ただし、これが最後だと決めて

もう二度と泣かない
全ては私のせいなのだから

でも………
ああ神様……私は彼を愛してしまった

あと少しだけ、彼がとりあえずと
決めた間だけでかまわない
偽りでもいい勇斗の妻として
そばにいさせて……

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