桜が求めた愛の行方

『まさか!?おまえもやり直したいと
 思っているのか?』

『違うんだよ、零士……
 まだ続きがあるんだ、な?』

蒼真は勇斗のグラスに新しい酒を注いで、
肩を叩いた。

『………さくらには男がいた』

『まさか!!』

『そうなんだよ、俺もそれ聞いてびっくり』

『俺も何かの間違いだと思うけど……』

崇も蒼真も首を振った。

『間違いないのか?』

勇斗はまた酒を煽った。

『ザ・トキオの部屋に二人で行こうとしてた 所に出くわした』

『誤解じゃないのか?ただの友達とか?』

『俺もそう言ったんだけどね』

蒼真が苦笑いする。

『言い訳聞かずにさらったんだって』

『さらったりしてねー』

『まったく、ようやくさくらちゃんを
 手に入れたと思ったのになぁ?』

『どういう意味だ?』

勇斗が崇を睨んだ。

『まあまあ』

蒼真が割って入る。

『勇斗だって、わかってるさ。
 だからこんなザマなんだろ』

『俺が何をわかってる?』

今度は蒼真を睨む。

やれやれと両手を挙げて蒼真が零士に
頷いた。

『おまえさ、
 さくらちゃんをずっと好きだったろ?』

零士が言うと、勇斗が目をむいて驚いた。
その様子に3人が同時に爆笑した。

『ふざけるな!そんな訳ないだろ!』

『こいつ、まだ否定するつもりだぜ?』

『それこそ今さらだな』

『何でそうなる?!』

睨む勇斗に結局また説明係りが
蒼真にまわってくる。

『勇斗さあ、気づいてなかったかも
 しれないけど、高等部でさくらちゃんに
 近づこうとしてたヤロー、
 みんな威嚇してただろ?』

『んな事してない!!
 あれはあいつの親父さんに頼まれてた
 って言うか……』

『そうだな、お前は妹だって言い訳してた
 けど、俺ら誰もそれ信じてなかったから』

崇がにやっと笑った。

『はあ?!』

隣のお嬢様校に通うさくらは、
目立つ存在だった。
細い手足に黒く長い髪、綺麗な顔立ちに
あの大きな瞳。
本人は否定するだろうが、
透けるような白い肌がどことなく儚く見えて、その雰囲気が庇護欲を呼び覚ます。

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