桜が求めた愛の行方
『代わりました、勇斗です。
こちらこそお世話になっております……
えっ?!本当ですか?!はい!光栄です。
では、日を改めまして、はい、もちろん!
よろしくお願いします!』
受話器を置いた勇斗はガッツポーズをした。
『浮かれている場合じゃないと思うけど?』
真斗の怒りはピークに達した。
『ふざけるのもいい加減にしろよ!』
『なんだと?!』
『さくねえに何をした!!』
『おまえには関係ない』
『それならさっさと彼女を解放しろよ!
兄さんなんかに、さくねえは勿体無い』
『真斗、おまえ!!』
『それであの美那とかいうモデルと
やり直したらいいじゃないか!』
『おまえなぜそれを?!』
『知るか!!
兄さんなんか地獄に堕ちればいいんだ!』
『まさと………』
弟の顔が怒りから悲痛に変わったから
勇斗の毒気がすっかり抜けてしまった。
昔から母に似てユーモアがあり、
周りの空気を読むのが得意な弟。
五つ離れているせいか、兄弟喧嘩も殆んど
なく、どちらかといえば勇斗もさくら同様
真斗がかわいくて仕方なかった。
どうやらここは自分が折れるべきだろう
それに、真斗の言うことは間違っていない
『確かに俺は地獄に堕ちるような事を
さくらに対してしたかもしれない……』
『かもしれない?』
ちぇっ、その言い方は母さんそっくりだ!
『いや、した……している』
『それで?』
くそっ。
反撃しようと開けた口を、真斗の次の言葉を
聞いて閉じた。