桜が求めた愛の行方
『兄さんは、さくねえを愛してないのか?』

『うっ』

またしてもそれか!!
弟にまで、自分が愚か者だという烙印を
押されてしまうとは!

『なあ!どうなの?』

『もちろん、愛している……やめろ!
 それ以上言うな!自分が馬鹿なのを
 弟にまで言われたくない』

『ふんっ、僕以外に指摘してくれる人が
 いてよかったよ』

『真斗!!』

『その様子なら反省してるってことだよね?
 修復するつもりがあるんだよな?』

『もちろんだ』

親友達に指摘されてから、どうやってさくらを
取り戻そうか必死に考えている。

『さっさと謝って仲直りしろよ』

『そんな単純なことじゃない!』

『何が?』

『さくらには男がいるんだ』

『はーあ?』

真斗は本気で首を捻った。
さくねえに限ってそんなはずはないし……

まさか!!
ニールが言ってたのは、本当だったのか?!

さくねえとニールの仲を誤解していたって?

確かに……事情を知らない人間からして
みれば、至極当然なのかも知れない。

僕は付き合いが長いから麻痺してしまって
いるんだ。

真斗はこの件で初めて兄に同情した。

『それってニールのことだよね?』

『何でおまえあの男の名を!?』

『やっぱりか………』

真斗はため息をついてから、段々可笑しくなってきた。

『おまえも知ってるという事は、やはり
 パリにいたときから……』

『ふっ……ははっ…あはははっ……』

急に腹を抱えて笑いだした弟の姿に
勇斗はすっかりめんくらってしまった。

『まさと?』

『ごめん、ごめん!……はははっ……』

何とか笑いを押さえて、真斗は兄の為に
真剣な顔を作った。

『兄さん、さくねえから何も聞いてない?
 って、話す機会もあたえてないか…』

『何のことだよ?!』

『あのさ……』

『勿体ぶらずに早く言え!!』

『ニールはゲイだよ』

『はっ?!』

鳩が豆鉄砲とは、まさにこのことだろう

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